パラレルジョブ
CPU コアを複数同時に使用し、長時間実行するプログラムを少数実行する場合は、並列ジョブ(parallel job)として実行してください(多数実行する場合は並列ジョブのアレイジョブを使ってください。)。投入コマンドはsbatchコマンドを利用します。
SlurmにはAGEでのPE(Parallel Environment)に対応する機能はありません。ほぼ同等のコアのわり付け方をすると考えられるオプションの指定の仕方についてご紹介します。
参考情報
- Support for MultiCore/Multi-Thread Architecture(開発元の詳細ドキュメント)
- CPU Management User and Administrator Guide
パラレルジョブの種類(概要)
AGEのPEで用意されている環境に沿って、Slurmで、 それに対応するコアの割り付け方をほぼ実現する為のSlurmでのオプション群を示します。
AGEで用意していたPE環境名 | PE環境の意味 | 同様の資源確保をするために指定するSlurmオプション群(例) |
---|---|---|
def_slot | 同一計算ノード上にNTASK個のCPUコアを確保する(NTASKが計算ノード上のCPUコアを超えている場合はジョブは開始されない | -N 1-1 --n NTASK |
mpi | 複数の計算ノードに渡ってNTASK個のCPUコアを用意する。その際に計算ノードはより分散して計算ノードを使用するようにしてラウンドロビンでタスクを割り当てる | [-N NODES] -n NTASK --spread-job |
mpi-fillup | 複数の計算ノードにわたって NTASK 個の CPU コアを確保する。その際に計算ノードの台数がなるべく少なくなるようコアが確保される。 | [-N NODES] -n NTASK |
pe_n | 複数の計算ノードにわたって NTASK_1個の CPU コアを確保する。その際に計算ノード1台あたりNTASK_2個のCPUコアを割り当てる | [-N NODES] -n NTASK_1 --ntasks-per-node=NTASK_2 |
AGEのPEの場合と異なり、上記のNTASK数で範囲指定はできません。上記のNODESについては範囲指定が可能で、-N MINNODES-MAXNODES
と最小ノード数と最大ノード数を範囲指定することが可能です。
Slurmの場合は、-N
で指定するノード数と --ntasks-per-node
で指定するノード単位で割り当てるタスク数を調整することで並列ジョブを実行することが一般的です。この際に、ノード数とノード単位のタスク数の積が全体のタスク数(並列数)になる点に注意してください。
並列ジョブに対して、メモリ要求量を指定する際の注意事項
並列ジョブに対して--mem
(1ノードあたりでそのジョブに割り当てるメモリ量)、--mem-per-cpu
(1CPUコアあたりでそのジョブに割り当てるメモリ量)を指定する場合、指定したノード数、またはCPUコア数と指定したメモリ量が掛け合わされた容量のメモリをシステムに要求してジョブが投入されますので、その点に留意してください。
パラレルジョブの種類(詳細)
CPUとメモリ確保の様子
sbatch、srunコマンド実行時にオプションで明示的にメモリ量を指定しない場合、システム側の設定により、CPUコアあたり8GBのメモリが割り当てられます。(計算機の種類、キューの種類によって異なります。)
例えば、下記のように指定した場合、並列ジョブが使用するメモリ総量として 計算ノード1台上に16×8=128GB を指定したことになります。 その点について注意した上で指定する要求メモリ量を決定してください。
-N 1-1 -n 16 --mem-per-cpu 8G
並列ジョブ(1)(def_slotに対応) 同一の計算ノードに指定したコア数を充填して確保する実行方法
一台の計算ノード上でNTASK個のコアを取得してジョブを投入する方法は以下のようになります。この際、--mem-per-cpu
オプションを指定して、1CPUコアあたりのメモリ量を指定すると、CPUコア数とタスク数の積のメモリ量が計算ノード上で確保されるのでご注意ください。
#!/bin/bash
#SBATCH -N 1-1
#SBATCH -n 2
#SBATCH --mem-per-cpu=20G
#SBATCH -t 0-00:10:00
#SABATCH -J an_example
make -j 2
上図の例では、メモリは1タスクあたり20GB、20GB×2コア=40GBが一台の計算機の中に確保されます。
並列ジョブ(2) (mpiに対応) なるべく別の計 算ノード上に指定したコア数を確保する。
#!/bin/bash
#SBATCH -N 2
#SBATCH -n 8
#SBATCH --spread-job
#SBATCH --mem-per-cpu=10G
#SBATCH -t 0-00:10:00
#SABATCH -J an_example
your_program
上記の場合、-N
が確保するノード数、-n
がジョブ全体のタスク数、--spread-job
と指定するとなるべくノード間に均等な数のタスクを割り当てようとします。
並列ジョブ(3)(mpi-fillupに対応) なるべく同一の計算ノード上に詰めて指定したコア数を確保する。
Slurmは、極力計算ノード上に充填してタスクを割り当てていくように設定されています。
#!/bin/bash
#SBATCH -N 2
#SBATCH -n 4
#SBATCH -t 0-00:10:00
#SBATCH --mem-per-cpu=20G
#SABATCH -J an_example
your_program
Slurmのデフォルト動作として、タスクを計算ノードに充填しながら割り当てていきます。入りきらない場合は、別の計算機にリソースを確保しようとします。上図の例だとメモリは1CPUコア当たり20GB、2台の計算機のうち、どちらか一方の計算機に 3コア×20GB = 60GB、もう1台に1コア × 20GB = 20GB、合計 20GB × 4コア = 80GB 確保されます。
並列ジョブ(4) (pe_nに対応) 各計算ノード上に指定したコア数を確保して複数計算ノードを使用する方法
#!/bin/bash
#SBATCH -N 2
#SBATCH -n 8
#SBATCH -t 0-00:10:00
#SBATCH --ntasks-per-node=4
#SBATCH --mem-per-cpu=8G
#SABATCH -J an_example
your program
メモリの取られ方は上図の通りだと1CPUコア当たり8GB、各計算機に 4コアx8GB = 32GB ずつ、合計 32GB x 2台 = 64GB 取られます。
MPIプログラムを実行する場合
遺伝研スパコンでは、OpenMPIをMPI処理系の実装としてインストールしています。
以下のような形で、OpenMPIのmpirunコマンドを利用してMPIプログラムの実行モジュールを起動してください。mpirunとslurmの組み合わせでは、mpirunコマンドの-np
等のオプション指定は必要ありません。
#!/bin/bash
#SBATCH --job-name mpi-test
#SBATCH -N 1-1
#SBATCH -n 8
#SBATCH -o %x.%J.out
mpirun mpi_test
上記のように記述すれば、sbatch側でSlurmに必要計算資源を要求して-n
オプションで指定された8並列でmpirunでプロセスを起動していくという動作になります。
OpenMPで記述されたプログラムを実行する場合
OpenMPを利用したプログラムのバイナリモジュールを実行する際には、ランタイム変数としてOMP_NUM_THREADSを環境変数として指定して ノード内のスレッド並列実行数を指定することが可能です。以下のような記述でOMP_NUM_THREADSを設定してプログラムを実行してください。
OMP_NUM_THREADS指定を省略することは可能ですが、その場合はデフォルト動作としては環境が認識するCPUコア数全てを利用しようとしてプログラ ムは動作します。 計算ノードを1台占有してジョブを実行する場合は、OMP_NUM_THREADSを指定しなくても問題ありませんが1台の計算ノードを複数ジョブで共有する場合や、 環境に働きかけるオプションが複数指定されていて、どの数値が設定されるかわからない場合は、明示的にOMP_NUM_THREADSを設定することを推奨します。
#!/bin/bash
#SBATCH -N 1-1
#SBATCH -n 1
#SBATCH -c 10
export OMP_NUM_THREADS=${SLURM_CPUS_PER_TASK}
./omp_sample
exit $?
上記のように指定した場合、以下の意味になります。
-N 1-1
ジョブで利用するノード数を指定-n 1
ジョブで起動するタスク数を指定-c 10
ジョブで使用するCPUコア数を指定。この数が、SLURM_CPUS_PER_TASK環境変数に代入される。
計算ノードを1台占有する場合
#!/bin/bash
#SBATCH -N 1-1
#SBATCH -n 1
#SBATCH --exclusive
./omp_sample
exit $?
並列ジョブで利用するSlurmの環境変数
ジョブの実行時に、以下の 環境変数が、起動されたジョブの環境変数に渡されています。これを利用して内部の並列動作を上の例の様に指示します。利用可能な環境変数の詳細については、オンラインマニュアルを参照してください。
Slurm環境変数名 | 変数の説明 |
---|---|
SLURM_NTASKS | -n で指定したタスク数 |
SLURM_CPUS_PER_TASK | -c で指定したCPUコア数 |
SLURM_JOB_ID | ジョブID |
SLURM_MEM_PER_CPU | --mem-per-cpu で設定したメモリ量 |
並列ジョブでどの計算ノードが確保されたかを知る方法
squeueでジョブが投入されたことを確認します。表示された項目の中でNODESは確保されたノード数、NODELISTがノード名のリストを示します。
xxxxx-pg@at022vm02:~$ squeue
JOBID PARTITION NAME USER ST TIME NODES NODELIST(REASON)
642 parabrick test.sh xxxxx-pg R 0:23 3 igt[010,015-016]
または、pestatコマンドでジョブの計算ノードへの投入状況を確認することが可能です。
yxxxx-pg@at022vm02:~/parabricks$ pestat
Hostname Partition Node Num_CPU CPUload Memsize Freemem Joblist
State Use/Tot (15min) (MB) (MB) JobID User ...
igt009 igt009 down* 0 48 0.03 386452 366715
igt010 parabricks mix 4 48 0.24* 386462 377973 780 yxxxx-pg
igt015 igt015 idle 0 48 0.00 386458 380937
igt016 parabricks* idle 0 48 0.17 386462 379696
個人ゲノム解析区画での並列プログラム実行に関する注意事項
個人ゲノム解析区画で、GPUを搭載した計算ノードを利用していて、搭載したGPUを全て占有してジョブが稼働していても、CPU、メモリが 空いていると、GPUを利用しないジョブが同じ計算ノードに投入される可能性があります。それを防いで占有状態で並列ジョブを動作させたい 場合の実行方法について説明します。